11月の毎週末、“那覇のジャズ”を体感することができる市内のジャズバーを巡る「那覇ジャズまーい」は11月18日に最終日を迎えた。
那覇文化芸術劇場なはーとと、ドラマーで作曲家の中村亮さんが企画するこのワークショップでは、これまで2日間かけて4箇所を巡ってきた。
どの店も1度行けばそれぞれの魅力が脳裏に刻まれるほどの個性に溢れていて、街場でジャズが聞けることの豊かさを感じる。
ワークショップ最後の日の1件目は、若狭にある「ジャズライブイン寓話」。
那覇中学校の目の前にある店舗は、昼間の明るい中で訪れると地域の人たちが憩う喫茶店のような雰囲気で、非常に親しみを感じる。が、開演時間に1音目が鳴り響くと、会場は一気にムーディな空気に包まれた。
演奏メンバーは屋良朝秋(ピアノ)、ぶん岩崎(サックス)、たっちゅー(ベース)、津嘉山善栄(ドラム)の4人編成。
楽曲がしっとりしているせいもあるが、それ以上にベテランプレイヤーが揃うバンドということもあって、出音そのものがかなり落ち着いたトーンで、少ない音数の“間”に何とも言えない味わいがある。
加えて、年季の入った店内の空気感が良い意味で音色にローファイな響きをまとせて、味わい深さを増幅している。
続く2曲目ではロマンティックな屋良さんのピアノのイントロに、ぶんさんがサックスの甘いメロディーで応じる。
視界に少しザラついたフィルターがかかり、目の前で60〜70年代の日本映画にあるワンシーンを幻視しているような不思議な陶酔感に包まれた。
次いで披露したのは打って変わって軽快なリズムの楽曲で、バーカウンターを軽く手で打ってリズムをとっている人や、最前列には大きく身体を揺らしている人も。
演奏の熱量が増していくにつれて、ぶんさんのサックスが、推進力のあるメロディーでバンドをグイグイ引っ張って、アンサンブルがどんどんドライブしていく。
楽曲の途中で「いい日旅立ち」や『情熱大陸』のテーマを入れ込む遊び心を見せると、客席のテンションが明らかに上がった。
ラストはぶんさんがサックス1本で色気のある流れるようなメロディーを華麗に繰り出して、ジャズの、音楽のカッコ良さと楽しさを見せつけた。
「サックスのメロディの後に拍手が起こってたんですけど、それって珍しいんですよ。
それだけメロディーが素晴らしかったということですね」と、ガイド役の中村さんも絶賛。
「自分が良いと思った時に『イェーイ!』って声をあげてもいいし、拍手してもいい。
それもジャズの楽しみ方の1つなんですよ。誰かがそうすることで、プレイヤーも会場の雰囲気も盛り上がるので、感動したら積極的に拍手してください」と付け加える。
ここで、ステージにオーナーの屋良成子さんが登壇して、中村さんからのいくつかに質問に応じた。
「寓話」が営業を始めたのは1979年で、沖縄を代表するジャズピアニストとして活躍した故・屋良文雄さんが開いた。普段は息子の朝秋さんを中心としたメンバーがパフォーマンスしている。
「いくら持っていれば楽しい夜を過ごせますか?」という中村さんの質問には
「チャージが1,500円で、ドリンクを2杯くらい飲むと考えると3,000円あれば大丈夫です」と答える笑顔の成子さん。
「喋りながら音楽を聴く、飲みながら音楽を聴く。これもジャズなんじゃないかな、と私は思います。
敷居が高いイメージがあるかもしれないけれども、気軽に楽しんでもらえたらいいなって思います」とにこやかに付け加えた。
そのままの流れで中村さんからジャズの楽しみについて聞かれたぶんさんは、
「うーん、テキトーでいいところ。難しく考えないでいい(笑)」と答えて、
ひと笑いかっさらっていた。
そんなぶんさんは、後半戦の演奏でも吸引力のあるメロディーを次々と奏でて観客を魅了。
最後は「往年のダンスナンバーをやります、踊ってください」と一言添えて、
ミラーボールが欲しくなるようなダンサブルなグルーヴで観客の身体を一気に揺らす。
パーカッシブなベース・ソロ、ビートを押し出したドラム・ソロを経て、
メインテーマからサックスのソロでも存分に魅せて会場の熱量をクライマックスまで持っていくと、
参加者の満面の笑みと大きな拍手とともに最終日の1件目を締め括った。
執筆・撮影:真栄城潤一
■店舗情報
ライブイン寓話
住所:那覇市若狭3丁目2-27コパ1階
営業時間:19:30〜 ライブ:21:15〜
定休日:月曜
チャージ:1,500円
公式フェイスブック:
https://www.facebook.com/guuwa?locale=ja_JP