出会いシリーズ2『花売の縁オン(ザ)ライン』稽古場日記【1回目】

  1. 出会いシリーズ2『花売の縁オン(ザ)ライン』稽古場日記【1回目】

Columnコラム

『稽古場より心理的安全性をこめて』

 なんでも、「心理的安全性」が高い組織は、良いパフォーマンスを発揮しやすい傾向にあるらしい。
 「心理的安全性」とは、平たく言えば「自分の考えや気持ちを安心して表現できる状態」のことらしい。
 
 今回、『花売の縁オン(ザ)ライン』の稽古を始めるにあたって、6月16日の時点で、軽い顔合わせも兼ねた「ハラスメント防止講習会」なるものがあった。稽古場日記を書くことになった私にも出席してもらいたいとのことで、私はこれに出席した。
 その「ハラスメント防止講習会」のなかで出た話が、この「心理的安全性」であり、その講習を受けながら、企画制作側の「このチームの風通しを良くしたい」という気概が感じられた。
はじめに「ハラスメント防止講習会」を行うことで、攻撃的な態度や発言を減らしていこうとする取り組みは、なんらかの制作の現場に入っていくにあたって、とても正しい姿勢だと、私はおもう。
 
8月28日には、大人数が集まった正式な顔合わせ&読み合わせがあり、『花売の縁』という古典を、大胆にアレンジ(というか魔改装と増築?)した台本の読み合わせは、笑いに包まれながら和やかに進んだ。


 
 そして10月26日。
ついに稽古初日を迎える。
 詳しい稽古内容は次回以降に書くとして、その日の白神さんと兼島さんの両演出家からは、「ネガティブな態度」や「曖昧かつ過度に強い言葉」で相手に推量させ、役者を演出家の思っている“正解”に持っていく方法ではなく、例え完璧に説明できない自分に焦れったくなろうとも、どこまでも冷静な態度で「言葉を尽くして」説明しようとする、静かな覚悟を感じた。
その甲斐あってか、この日の稽古参加者はとても気軽に自分の意見を発言していたような気がする。
かつて、蜷川幸雄は灰皿を投げた。チャーリー・パーカーはシンバルを投げられた。「弟子とは理不尽に耐える事だ」と言ったのは立川談志で、「役者は地獄を見なければいけない」みたいなことを言ったのは能楽師の観世清和である(申し訳ないが出典不明)。
 できれば「理不尽」や「地獄」は御免被りたいが、表現する者にとって、ある程度の「理不尽」や「地獄」を避けて通ることができないのも事実なわけで……。ならばせめて情理を尽くして語られる「理不尽」や「地獄」であれば、受け手は、表現への情熱を損なうことなく、己の技芸の研鑽に励むことができる……のかもしれない(歯切れが悪くてすまない)。


 
□□プロフィール□□
奥間 空[おくま・そら]…詩人。1992年生まれ。沖縄県嘉手納町出身。二十代後半より、詩や小説などの執筆活動を始める。受賞歴に第15回おきなわ文学賞詩部門一席など。近年は文芸だけでなくアート作品の制作にも着手している。
https://twitter.com/okuma_sora
□□公演概要□□

「出会い」シリーズ②
白神ももこ×兼島拓也『花売の縁オン(ザ)ライン』

日程:11月30日(土)14:00開演、19:00開演/12月1日(日)14:00開演
会場:那覇文化芸術劇場なはーと(1階)小劇場
料金:一般4,000円/U24(24歳以下)2,000円/18歳以下:1,000円/障害者・介助者:2,000円
公演詳細はこちら

最終更新日:2024.10.31

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