なはーとベイビーシアタープロジェクトレポート なはーとの巻「みんなのかたち モーイモーイあしびー」VO1

  1. なはーとベイビーシアタープロジェクトレポート なはーとの巻「みんなのかたち モーイモーイあしびー」VO1

Columnコラム

那覇文化芸術劇場なはーとでは、アートを通してあかちゃんと大人の新しい関わり方を発見する「なはーとベイビーシアタープロジェクト」を今年からはじめました。このプロジェクトでは、0歳~2歳のあかちゃんと、あかちゃんに関わるすべての大人たちが、お互いに心地よく影響し合える空間を、時間をかけてつくっていきます。
※ベイビーシアターとは、あかちゃんとおとながともに参加し体験する、新しい舞台芸術です。

12月からは、いよいよなはーとの巻のはじまりです。なはーとの小スタジオを舞台に、全5回のワークショップを通してみんなで「ベイビーシアター」をつくります。

今回は、2024年12月21日(土)に開催した1回目のワークショップの様子をお届けします。
 ワークショップの概要はこちら

「みんなのかたち モーイモーイあしびー」

ワークショップ初日は、集まった12組のあかちゃんと保護者のみなさんに向けて、なはーと職員の平岡さんからプロジェクトの説明をすることからはじまりました。
「私はここで働く前から劇場が好きで、毎日のように通っていましたが、育休中の1年間はほとんど行く機会がありませんでした。子育てと劇場に大きな距離を感じたので、今日はベイビーシアタープロジェクトをきっかけに、皆さんに集まっていただけてうれしいです。今回のワークショップをとおして、あかちゃんには世界がどう見えているのか、まわりの空気やあかちゃんの気持ちを想像しながら参加してみてください。普段の子育てとは違う発見があり、面白いのではないかと思います。」
ベイビーシアターは、参加者全員が一体となって楽しむことができる場です。多くのサポーターのおとなが見守る中、あかちゃんたちは安心して自由に過ごすことができます。

 
 
今回のワークショップでは、現代アートのアーティストである平良亜弥さんと津波博美さんのおふたりが中心になってプログラムを考え、参加者のみなさんにあわせて進行していきます。
「では、好きな色の紐を2本選んで丸を作ってみてください。」という声掛けで、初めてのワークがはじまります。会場の中央には、さまざまな色や素材の紐や布がおかれていました。
それぞれ好きな色や素材で床にまるを作ったら、親子で中に入って自己紹介をしました。

丸の中を素材でいっぱいにしてみる

「次は、今座っている丸を素材でいっぱいにしたいなと思います。まずは好きなものを1種類選んで置いてみてください。どんな置き方でも大丈夫です。」
保護者にあわせてあかちゃんも動き始めます。素材は大小かたちも様々ですが、軽いのであかちゃんでも楽に運べます。素材が増えるに連れ、それぞれの丸の中がいろいろなかたちへと変化。

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さらに、自分の丸だけでなくほかの人の丸にも素材を置いていきます。丸が素材でいっぱいになってきたところで、「丸の中をひとつの絵だと思って外から見てみてください。自分の丸、みんなの丸を鑑賞してみましょう。」と平良さんが呼びかけます。

俯瞰して見てみると、丸に置いた素材がまるでアート作品のように見えてきました。また、布や紐を使うことで、平面だけでなく立体的な作品を作り出せることがわかりました。自由にハイハイで動き回るあかちゃんも、丸の作品はよけて通っていて、もしかすると形の変化から何かを感じているのかもしれません。

丸の中にある素材を全て身につける

次は、丸の中にあるすべての素材を身につけていきます。最初はとまどう表情が多く見られましたが、まわりを見ながら少しずつ装着していきます。頭に紐をまいたり、腰に布を巻き付けたり、背中に羽をつけたり、…素敵に大変身!
 

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日常ではあかちゃんの着替えにてこずることも少なくないと思いますが、楽しそうな保護者の笑顔に安心しているのか、ほとんどのあかちゃんが自然に受け入れていました。あかちゃんなりに保護者の気持ちに共感しているのかもしれません。

手づくりランウェイでファッションショー

  素材をすべて身につけたら、一人ひとりとても華やかな装いになりました。せっかくなので、急遽ファッションショーをすることに!余った素材を両脇に寄せたら、あっという間に手づくりランウェイの完成です。
サポーターもスタッフも全員参加し、即興のファッションショーがはじまりました。
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注目されてドキドキしながらも、手拍子に合わせてリズムよく登場する参加者のみなさん。足を踏み鳴らすような動作で、楽しんでいるあかちゃんの様子も見られました。

布をつなげて大きな空間を作る

休憩を挟んだ後半は、布を中心としたワークがスタート。2枚ずつ好きな布を選び、端と端を結んで布どうしをつなぎ合わせます。この要領で、今度は隣の人と布をつなぎ、繰り返すことで一枚の大きな布に仕上げていきます。

保護者が作業している間は、サポーターさんがあかちゃんの遊び相手になります。まだ慣れないあかちゃんは、無理に保護者から離れなくても大丈夫。自分のできる範囲で関わりを持つのが”ベイビーシアター”です。
また、肩を並べて作業することで、自然と隣の人と会話が生まれているのが印象的でした。

 

リラックスした雰囲気の中、今度は保護者とあかちゃんにごろんと寝転んでもらいます。いつの間にか、参加者全員をすっぽりと包みこめるほど大きくなった、一枚の布。スタッフみんなで布を上下に動かします。

布の下で、ふわっと吹く風、空間の変化に目をみはるあかちゃん。なにかの余韻を感じているかのように、じっと上を見上げるあかちゃん。空間の変化についていこうと、五感を研ぎ澄ませているようにも見えます。

 

 

ふわふわ優しい動きの布が一転、今度はダイナミックな動きで上空を布が駆け抜けていきます。ドタドタドタという足音、ぴゅーんと巻き起こる風、たくさんの色。参加者からは自然と声や拍手が湧き出ました。

最後は輪になって、今日の感想をシェア。
「おでかけの巻で参加したとき、子どもがとても楽しそうだったため」「何が起こるかわからない感じが楽しい」「家で見ることが多く、外の刺激を子どもに体験してほしいから」という期待の声などを聞くことができました。なにより、あかちゃんを見守るサポーターがいることで、安心して自分も楽しめたという感想も多くありました。

ワークショップ終了後も「ゆんたく時間」として、1時間ほどスタジオを開放。遅れて参加したり、最後の方で元気いっぱいになったあかちゃんのために、自由に過ごせる余白の時間を設けました。

今日のワークショップの前半では、床に散らばっていた素材を丸の中に並べると作品になり、身につけると衣装になる、という視点を変えることで発見があるということを体感。また、衣装を身につけてランウェイを歩くことで、人から見られる時の体や心の変化を感じてもらいました。
後半では、実際に寝転んで体ごと視線を変えてみたり、大人とあかちゃんが同じ目線を体験してみるということを試してみました。
ワークショップの流れは、アーティストが練りに練ってつくっていますが、ランウェイで各自の衣装を見せ合いっこしたのは、実は予定にはありませんでした。
あかちゃんはもちろん、おとなも個性はさまざま。今後も参加者の様子をみながら、即興でプログラムを組み立てていきます。

「みんなのかたち モーイモーイあしびー」第2回目のレポートも、どうぞお楽しみに!

ライター:普久原絵里子

最終更新日:2025.02.18

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