みなさんは、ジャズバーに行ったことがありますか?仕事帰りのひと時や、友人とのフランクな再会の場に、ジャズはいかがだろうか?
「はじめてのジャズスポットめぐり」と銘打って、11月5日、12日、18日の3日間にわたり那覇市内計6カ所のジャズバーを巡る「
那覇ジャズまーい」。
ジャズバーはなんだか敷居が高い、そう思っている人にも気軽にジャズを楽しんでもらおうというワークショップだ。一日で2軒を巡り、さまざまなスタイルのジャズバーを幅広く楽しめる。
那覇文化芸術劇場なはーとが、中村亮さんとともに企画をした。中村さんは那覇市出身のドラマーで、アメリカ、中国、日本、ドイツなど国内外の様々な地域でプロ活動をしてきており、ジャズをはじめ幅広いジャンルで活躍している。この「那覇ジャズまーい」では、ジャズの楽しみ方の指南役としてガイドを務める。
初日となった5日。1軒目は那覇市牧志、国際通り沿いの老舗「ジャズライブ カムズハウス」だ。
カウンターとテーブル席からなる20席ほどの空間は満員御礼。お客さん同士やミュージシャンと近しい距離で接することができる店内では、ジャズの音色もよりダイレクトに感じられるのが魅力だ。
音を奏でるのは川崎巽也(ギター)、川崎円佳(ボーカル)、広瀬千代(ピアノ)のトリオだ。
1曲目は「Pure Imagination」。11月になっても暖かい日差しが差し込む沖縄の午後のひと時にぴったりの、ゆったりとしたナンバーが会場を包む。
「ジャズバー」とは言っても、ジャズ以外の演奏が楽しめるのもうれしい。3曲目に演奏されたボサノバの名曲「Desafinado」では、語り掛けるようなボーカルに更なる彩りを添えるかのように、ギターとピアノが楽しく絡み始める。参加者のお酒も美味しくなりそうだ。
お店が始まったのは1980年。その歴史感は、ピアノの上にまで積み重なった数々の古い楽譜本や、壁に所狭しと並べられたレコードからも感じることができる。カウンターからずっと朗らかな表情を見せているのは、オーナーの香村悦子さんだ。
「夫がピアニストで、最初は那覇市内の別の場所でお店を始めました。
店の前でモノレールの工事が始まったのを機に今の場所に移って、
21年経ちます」と、那覇の都市開発の移り変わりと共にカムズハウスも営みを続けてきた。
実は那覇の国際通り周辺は“ジャズ処”と言っても過言ではない。曲の合間に解説をする中村さんはこう言う。
「歩いて行ける範囲内で、毎日のようにジャズの生演奏がされている場所がこんなにたくさんあるのは、日本では多分他に無いと思います」。
国内外さまざまな場所で音楽のキャリアを重ねてきた中村さんの言葉には説得力があると同時に、沖縄で生まれ育った筆者としても目からウロコの意外さがあった。
そして「ジャズはもともと、完全にダンス音楽です」とも語る。
「沖縄でも本土復帰前にいろんな場所でダンスバンドのメンバーとして演奏していた方々が、復帰後は那覇に来てお店を出したという場所が多いです。なので、コンサートホールで静かにしっかりと聴くジャズとは違って、日常にある『デイリー』のジャズは、(もともとダンス音楽という意味で)楽しみ方や目的が違うと思っています。自分たちが楽しみに来ていて、自分たちが『良い』と思った時に拍手などで自由に意思表示する。すると、ミュージシャンも絶対良い演奏をするんですよ」
ジャズバーに初めて足を運ぶという人のためにも、中村さんは「次の曲で僕が拍手するんですけど、そのタイミングで皆さんも拍手してください」と笑いを誘いながら、アットホームな雰囲気に包んでいった。「自分が良いと思った時に拍手や声援を送ったら大丈夫です」。
続く曲にはお客さんも迷わず拍手を送り、思い思いの時間を楽しんでいた。
そう。意外とジャズは敷居が高い音楽ではない。むしろ、良いと思った時に好きに拍手や声援を送ってもいい、聴き手の自由度が高い音楽なのだ。
それは、コード進行の上を各パートがアドリブを乗せ合うジャズの音楽性そのものにも現れている。カムズハウスのライブチャージは1000円。
そしてドリンクは500円から。2000円札を握りしめてもおつりがくる価格だ。どうですか。敷居、低いでしょう?
執筆:長濱良起
■店舗情報
ジャズライブ カムズハウス
住所:那覇市牧志2丁目7-22 ソシアルビル・コスモ2階
営業時間:21:00~2:00
定休日:不定休
チャージ:1,000円
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