宮城さつき(フリーアナウンサー)
フランスを代表する芸術家ジャン・コクトーが1930年に手がけた戯曲「声」が京都の演出家と沖縄の俳優の手にかかるとどう現世に蘇るのか。初演当時の時代背景からもクラシックなものを想像していたら、ビビットな黄緑色で統一されたポップな舞台セットにまず意表を突かれた。電話で別れ話を展開する女性の一人芝居なのだが、鍵となる「電話」そのものは使わず、いびつで不安定な石積みを電話に見立てていた。常軌を逸し、ギリギリの精神状態を取り繕う女性の心情とも重なり演出の妙を感じた。女優さんの佇まいも今時の女性であったので、生まれ変わった新感覚の舞台として楽しんだのだが、後で聴くと戯曲のセリフは一切変更していないと言う。驚きとともに感激を覚えた。同企画は、なはーとが立ち上げた「出会いシリーズ」の第一弾であったが、作品、人、空間、時代と様々な交錯が生み出す化学反応が面白い。これからも大いに期待したい。
舞台写真:2023年10月 那覇文化芸術劇場なはーと大スタジオ
撮影:北上奈生子