出会いシリーズ1『声』公演レビュー【02】

  1. 出会いシリーズ1『声』公演レビュー【02】

Columnコラム

真栄城潤一(ライター)
目に突き刺さるようなライトグリーンの部屋のセットが、現実という会場の空間から毒々しいほどポップに浮かび上がっている。そこで新垣七奈が演じる「女」が、電話口の先の「あなた」にひたすらに声を発し続ける。
「あなたは私が呼吸できる唯一の空気」と表するほどに思いを寄せている相手への感情も、そしてそれがどこまで嘘でどこまで本当なのか分からない語り口も、めまぐるしく変わる1人芝居を演じ切った新垣のパフォーマンスは鮮烈だった。
上演の間、電話の先にいる相手の像は結べるようで結べない。もどかしさと不安に駆られるうちに、そもそも「あなた」は存在するのか…?という疑念すら湧いてくる。が、その不在を巡って脳みそが動く感覚は心地良い。
ポップなセットと新垣が発話する翻訳調の「女性言葉」との組み合わせは、時代・状況的なギャップで舞台に異化効果をもたらしていた一方で、今この時に敢えて「女性言葉」を強調することの意味や意義が抜け落ちていた。その部分で枷をブチ破り、現代性に突き抜ける回路を見出すことができれば、この作品は別次元の面白さを獲得することが出来るのではないか。そんな期待も感じた。
 舞台写真:2023年10月 那覇文化芸術劇場なはーと大スタジオ
 撮影:北上奈生子
「出会い」シリーズ①
和田ながら×新垣七奈  ジャン・コクトー『声』

日程:10月21日(土)、22日(日)
会場:那覇文化芸術劇場なはーと 大スタジオ

公演詳細こちら

最終更新日:2023.11.29

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