なはーとベイビーシアタープロジェクトレポート なはーとの巻「みんなのかたち モーイモーイあしびー」VO5

  1. なはーとベイビーシアタープロジェクトレポート なはーとの巻「みんなのかたち モーイモーイあしびー」VO5

Columnコラム

那覇文化芸術劇場なはーとでは、アートを通してあかちゃんと大人の新しい関わり方を発見する「なはーとベイビーシアタープロジェクト」を今年からはじめました。このプロジェクトでは、0歳~2歳のあかちゃんと、あかちゃんに関わるすべての大人たちが、お互いに心地よく影響し合える空間を、時間をかけてつくっていきます。
※ベイビーシアターとは、あかちゃんとおとながともに参加し体験する、新しい舞台芸術です。

12月からはなはーとの小スタジオを舞台に、全5回のワークショップを通してみんなで「ベイビーシアター」をつくります。
 

 

今回は、いよいよ最終回。2025年2月2日(日)に開催したおひろめ会の様子をお届けします。ワークショップの概要はこちら

 

「みんなのかたち モーイモーイあしびー」おひろめ会

おひろめ会の観客は、ワークショップの参加者同様に0才~2才12か月のあかちゃんと保護者の方が対象です。当日来ていただいた方の中には、以前子育て支援センターで開催した「おでかけアートワークショップ」の参加者の姿も見えました。
※観客も一緒に参加してもらいますが、分かりやすくするために、本コラムでは4回のワークショップ参加していたあかちゃんと保護者を「参加者」、おひろめ会のみに参加するあかちゃんと保護者を「観客」と表記します。

はじめて会場に入るあかちゃんは、他のあかちゃんが自由に過ごしているのを見て、徐々に遊びはじめました。サポーターの人数もいつもより多いため、一段と賑やかな雰囲気。
はじめになはーとの平岡さんより、今日はここにいる全員が参加者で、自由に楽しめる場であることが伝えられました。「あかちゃんがどういうふうに世界を捉えているか、想像しながら参加してみると面白いですよ。」

平岡さんの提案で、あかちゃんと同じような感覚を体験。少しの間目を閉じて、あかちゃんの温もりや床の感触を確かめたり、音の聞こえ方に耳を澄ませてみました。

ワークショップの成果をおひろめ!

「それでは、『みんなのかたち モーイモーイあしびー』をはじめます。」アーティストの平良さんと津波さんが、「まーるまーるぼーん」と言いながらなにかを手渡すようなジェスチャーで、声を掛け合いはじめました。
 次第に「まるまるぼーん」は周囲へと、手渡されていきます。呼びかけられた人は、また別の誰かに向けて呼びかけます。

はじめて来た保護者も、アイコンタクトで合図がくると、戸惑いながらも他の人にまわしていきます。大人の声に混じって、あかちゃんの声も聞こえました!可愛らしい声に一気に場が和みます。あかちゃんと一緒だと、不思議といつもより照れずに大きな声を出せる気がします。
参加者みんなで一斉に「まるまるぼーん」と呼びかけると、即興演奏とともに大きなボールが登場!

これまでのワークでもおなじみの紐に巻かれた巨大ボール。今までもたくさん戯れてきましたが、ボールはいつでもあかちゃんに大人気。「まるまるボーン、いないいないばぁ」と新しい言葉をつくって、ボールに呼びかけているようなあかちゃんもいました。


みんなで紐をほどいていくと、透明なボールに変身。ボールを彩っているふしぎな模様やシールは、ワークショップであかちゃんたちが描いたものです。
会場に鈴の音が鳴り響き、元気に登場したのは兄弟姉妹として参加していた子どもたち。あかちゃんと保護者に小道具をお届けする役割を担ってもらいました。ここからは、今までワークで取り組んできたことを活かして、積極的に表現をしていきます。

布の中にはいろいろな素材が入っています。これらを身にまとう参加者に影響されて、鑑客の親子も変身に挑戦です。素材を身にまとうという体験は、やってみると面白いこと!変身ごっこが好きな子どもの気持がわかったような気がしました。
紐や軍手、布といった日常的なアイテムも、ここでは特別な道具です。

続いて登場したのは、クラゲのような生き物。しばらく会場内を動き回ると、大きな屋根に変化しました。最後は、屋根の下でおとなもあかちゃんも音楽にのってモーイモーイ!みんなで踊ります。

初めは恥ずかしそうにしていた観客のみなさんも自由な雰囲気に影響され、リズムにのって体を揺らしたり、抱っこやおんぶであかちゃんとともに自由に踊りはじめました。楽器を鳴らして、アーティストとセッションする観覧者も出てきたりして、個々がそれぞれ楽しんでいるように見えますが、不思議と一体感が感じられました。

あかちゃんも大人もともに楽しむ世界

観客も参加者もそれぞれの高揚感に包まれた中、おひろめ会は幕を閉じました。
参加者からは、「とびきりのアートで、子も親ものりのりで感情豊かになれた」、「毎日育児に大変だが、この場に救われた」、「大勢でなにかを成し遂げるという、良い体験ができた」など、大人もあかちゃんもそれぞれが楽しめたという声をたくさん聞くことができました。
毎回参加してくれたサポーターからは「毎回新しい仕掛けがあり面白かった」、「今日が一番笑顔が溢れていた」、「ぜひ続けてほしい、周りにも教えたい」などの声や、新たな視点であかちゃんとの関わりを持てたという意見も。

ここまでたくさんの準備を重ねてきたアーティストのみなさんは、
「ベイビーシアターとはなにか、探りながら回を重ねていき、ほかにはない、新しいかたちができたのではないか。サポーターも子同士も垣根を超えて、一緒になって取り組めたのが、本当に良かったです。」とホッとしながらも、確かな手応えを感じているようでした。
また、スタジオの外から様子を見ている人もいて、当初描いていた”空間ごと自分たちが作品になった”と実感できる嬉しい瞬間もあったそう。
今回みんなでつくりあげたベイビーシアターは、常に空間に変化があり、その変化に対してあかちゃんも大人も素直に表現し、全員がフラットな関係性でともに参加できたのではないかと思います。
これまで連続してワークショップを開催してきましたが、ほとんど全員が毎回参加。同じ場所・メンバーで開催することで、あかちゃんもおとなも安心して自分を解放できる様子が、回を追うごとに感じられ、集大成としておひろめ会を思い切り楽しむことができました。

ライター:普久原絵里子

最終更新日:2025.03.06

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